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2006年 12月 03日
![]() Wall Street and the Bolshevik Revolution By Antony C. Sutton,1974 "What better way to divert attention from the real operators than by the medieval bogeyman of anti-Semitism? " Antony C. Sutton(1974) <米公式文書と米財界人の回顧録を駆使した、真実のロシア革命史> この本を、仮に日本語に翻訳した場合、これを読んだ人の反応は二種類に分かれるだろう。 一つは、信じられないとして思考停止する人々。もう一つは、「そうだったのか」として、世界史の裏側の秘密を的確に理解する人々である。 我々は世界史の授業で、ロシア革命は、レーニンとトロツキーという二人のボルシェヴィキ革命家によって、社会民主党のケレンスキー内閣を倒したことで実現したと教わっている。しかし、それは物事の半分しか見ていない説明である。ただのインテリだったレーニンやトロツキーが革命を資金もなしに実現できたはずがない。革命には巨額の資金が必要である。彼らはどこからその資金を得ていたのか。 ロシア革命を描いた文学作品ではアメリカ人のジョン・リードJohn Reed という人物による「世界を揺るがせた十日間」(岩波文庫)という本が有名である。この本をもとにつくられているのがウォーレン・ビーティ主演のハリウッド映画「レッズ」だ。このリードは、なぜロシアに行くことができたのか? この二つの疑問にアントニー・サットンは明解な答えを出している。それも公式の一級資料を使っているので疑問の余地がない。ロシア革命を成功させたのは、アメリカのウォール街の巨大銀行家たちの提供した資金だった。つまり、ロシア革命はウォール街にとっての「投資案件」だったのである。リードはモルガン財閥の出資している『メトロポリタン』という雑誌の記者だった。彼自身はモルガンやロックフェラーなどの大財閥を批判する記事も書いていたのだが、リードはウォール街が求めていた革命PRのための人材として利用されてしまったわけだ。 ![]() Wall street men greet Karl Marx. ロシア革命が起こった1917年から1918年にかけては、まだ第一次世界大戦が進行中だった。レーニンやトロツキーに資金を提供したのは、アメリカであるとも、ドイツでもあるとも言われている。 ただ、この本を読んで分かることは、アメリカとドイツが大戦の裏側で、戦後のロシア市場を巡る暗闘を繰り広げており、レーニンやトロツキーたちは最終的にはアメリカのウォール街の支援を受けることを決めたという点だ。 ロシア革命を米英が支援したことについては、第一次大戦の米英仏露にとっては、反ドイツ・オーストリアという点で利害が一致していた。ボルシェヴィキという勢力がいかに危険な存在であるかを、ウォール街の巨大銀行家たちは気が付いていた。だから、ロシア革命に資金を提供し、反ドイツのプロパガンダやドイツにおける社会主義的革命の支援を送り込んだエージェントを通じて実行させておきながら、米国国内では、同じウォール街の人物たちが、反共産主義連盟を結成して、「赤の脅威」を宣伝している。 ウォール街の革命支援勢力は、大金をつぎ込んで、反ドイツ帝国キャンペーンを行っていた、とこの本は指摘する。彼らはロシアにドイツとの戦争を継続させるために、米国政府の資金を使って、プロパガンダキャンペーンを行っている。そのフロント団体となったのは、「自由ロシアにおける市民教育委員会」といった組織で、この組織が「皇帝と戦って、革命を守れ!Fight the Kaisar and save the revoluion!」とのスローガンで大衆を扇動し、米英の軍需産業にとって利益になる戦争の継続を訴えさせた。戦争末期には、ドイツ国内で労働者に革命蜂起を促す、宣伝ビラを連合国の戦闘機からばらまく宣伝も行った。スパルタクス団などの革命組織もこの流れの中で利用されたコマにすぎなかったというわけである。 アメリカの金融資本は、大戦後のロシア経済をドイツが支配するのを極度に恐れた。ウォール街の生みの親であるシティのマーチャント・バンカーたちも同様の考えを持っていた。イギリスはドイツ派だったヴィクトリア女王が亡き後は、勃興してきたドイツ帝国を敵国と見なし、フィッシャー提督によるドレッドノート駆逐艦の建造を始めとしてドイツと帝国主義的競争を繰り広げていた。このキャンペーンを担っていたのが、ミルナー卿のような「自由帝国主義」派であり、ウィンストン・チャーチルのような生粋の帝国主義者たちだった。 イギリスの当時の首相であった、デヴィッド・ロイド・ジョージは武器商人だったバジル・ザハロフ Sir Basil Zaharoff と関係が深かった。彼がドイツとの戦争を続けざるを得なかったのは、そのような「死の商人」のネットワークにがんじがらめになっていたからである。 ![]() The Merchant of Death サットンは、1917年12月にウォール街の代表が、JPモルガンのパートナーだったトーマス・ラモントと一緒にロンドンを訪れ、ロイド・ジョージ内閣に対して、ボルシェヴェィキを支援するように圧力をかけ、米英の意思統一を図っていた事実を指摘している。この事実はイギリス側の公式資料から採ったものだ。イギリス首相を裏で操っていたのは、有名なミルナー卿であった。 ウォール街で革命支援の司令塔となったのは、アメリカの総合商社である、アメリカン・インターナショナル・コーポレーション(AIC)とモルガン財閥系のギャランティ・トラストGuranty Trustという金融会社、そして巨大銀行の重役たちが理事を務めるニューヨーク連邦準備銀行であった。AICにはロックフェラー系のナショナル・シティバンクの人間が多数重役会メンバーとして参加し、ギャランティ・トラストはモルガン財閥の人間が多かった。〔注:アメリカン・インターナショナル・コーポレーションは、AIGとは関係がない〕 === DIRECTORS OF MAJOR BANKS,FIRMS, AND INSTITUTIONS MENTIONED IN THIS BOOK(AS IN 1917-1918) AMERICAN INTERNATIONAL CORPORATION (120 Broadway) J. Ogden Armour Percy A. Rockefeller G. J. Baldwin John D. Ryan C. A. Coffin W.L. Saunders W. E. Corey J.A. Stillman Robert Dollar C.A. Stone Pierre S. du Pont T.N. Vail Philip A. S. Franklin F.A. Vanderlip J. P. Grace E.S. Webster R. F. Herrick A.H. Wiggin Otto H. Kahn Beckman Winthrop H. W. Pritchett William Woodward CHASE NATIONAL BANK J. N. Hill Newcomb Carlton A. B. Hepburn D.C. Jackling S. H. Miller E.R. Tinker C. M. Schwab A.H. Wiggin H. Bendicott John J. Mitchell Guy E. Tripp EQUITABLE TRUST COMPANY (37-43 Wall Street) Charles B. Alexander Henry E. Huntington Albert B. Boardman Edward T. Jeffrey Robert.C. Clowry Otto H. Kahn Howard E. Cole Alvin W. Krech Henry E. Cooper James W. Lane Paul D. Cravath Hunter S. Marston Franklin Wm. Cutcheon Charles G. Meyer Bertram Cutler George Welwood Murray Thomas de Witt Cuyler Henry H. Pierce Frederick W. Fuller Winslow S. Pierce Robert Goelet Lyman Rhoades Carl R. Gray Walter C. Teagle Charles Hayden Henry Rogers Winthrop Bertram G. Work FEDERAL ADVISORY COUNCIL (1916) Daniel G. Wing, Boston, District No. 1 J. P. Morgan, New York, District No. 2 Levi L. Rue, Philadelphia, District No. 3 W. S. Rowe, Cincinnati, District No. 4 J. W. Norwood, Greenville, S.C., District No. 5 C. A. Lyerly, Chattanooga, District No. 6 J. B. Forgan, Chicago, Pres., District No. 7 Frank O. Watts, St. Louis, District No. 8 C. T. Jaffray, Minneapolis, District No. 9 E. F. Swinney, Kansas City, District No. 10 T. J. Record, Paris, District No. 11 Herbert Fleishhacker, San Francisco, District No. 12 FEDERAL RESERVE BANK OF NEW YORK (120 Broadway) William Woodward (1917) Class A Robert H. Treman (1918) Franklin D. Locke (1919) Charles A. Stone (1920) Class B Wm. B. Thompson (1918) L. R. Palmer (1919) Pierre Jay (1917) Class C George F. Peabody (1919) William Lawrence Saunders (1920) FEDERAL RESERVE BOARD William G. M'Adoo Adolph C. Miller (1924) Charles S. Hamlin ( 1916) Frederic A. Delano (1920) Paul M. Warburg (1918) W.P.G. Harding (1922) John Skelton Williams GUARANTY TRUST COMPANY (140 Broadway) Alexander J. Hemphill (Chairman) Charles H. Allen Edgar L. Marston A. C. Bedford Grayson M-P Murphy Edward J. Berwind Charles A. Peabody W. Murray Crane William C. Potter T. de Witt Cuyler John S. Runnells James B. Duke Thomas F. Ryan Caleb C. Dula Charles H. Sabin Robert W. Goelet John W. Spoor Daniel Guggenheim Albert Straus W. Averell Harriman Harry P. Whitney Albert H. Harris Thomas E. Wilson Walter D. Hines London Committee: Augustus D. Julliard Arthur J. Fraser (Chairman) Thomas W. Lamont Cecil F. Parr William C. Lane Robert Callander NATIONAL CITY BANK P. A. S. Franklin P.A. Rockefeller J.P. Grace James Stillman G. H. Dodge W. Rockefeller H. A. C. Taylor J. O. Armour R. S. Lovett J.W. Sterling F. A. Vanderlip J.A. Stillman G. H. Miniken M.T. Pyne E. P. Swenson E.D. Bapst Frank Trumbull J.H. Post Edgar Palmer W.C. Procter http://www.reformation.org/wall-st-bolshevik-app1.html ==== これらのウォール街のビジネスマンたちはボルシェヴィキ政権の実現とその米国政府による早期承認を目指して暗躍した。その一部は、1919年に行われたラスク委員会というニューヨークにおける公聴会で明らかになっている。 ![]() William Boyce Thompson ウォール街は、アメリカ赤十字のミッションを隠れ蓑にして、ボルシェヴィキ・ロシアの市場調査を行っていた。その主要人物が、NY連銀の理事を1914年から1919年まで務めた、ウィリアム・ボイス・トンプソン William Boyce Thompson であり、トンプソンの跡を継いだテキサスの石油業者を務めた後、進歩党に入党し赤十字ミッションに参加したレイモンド・ロビンス Raymond Robins という人物であった。つまり、ボルシェヴィキ支援の裏にはスタンダード石油によるロシア産石油の確保というビジネス上の目的があったわけである。 ![]() Raymond Robins さらに言えば、ロシア革命という現象は、アメリカの大学やシンクタンクの学者たちにとっての格好の研究材料だった。ボルシェヴィキは、ロシアという国土を舞台に、生身の人間を素材にしながら、「あるべき理想的社会」についての一大実験を行っていたのである。この実験場がアメリカの資本で確保されたことに、ジョンズ・ホプキンス大学などの社会科学者たちは色めき立った。ここまで指摘するサットンの眼力は凄いと言うしかない。 ソヴイエト共産主義とアメリカの独占資本主義というのは非常に親和性がある。イギリスは独占経済をアメリカほどは経験しておらず、もともとは自由主義の国だったが、アメリカは独占経済が世界覇権を実現させた原動力になっていたのであり、その統制経済を特徴とするアメリカとソ連のこの時代の経済構造はまさにコインの裏表。アメリカの独占資本主義の跋扈を憂えた一般の大衆の希望がソヴィエト共産主義だったのだが、実のところこのソヴィエト共産主義を動かしていたのがなんとウォール街の資金だったのである。こうなると身もふたもない話であるが、アメリカの公式文書はそれを裏付けているのだ。 ウォール街とロシア革命の関係については、従来陰謀論といわれるジャンルの立場から多くが語られていた。しかし、このサットンの著作はマルクス主義的な分析ではあるにせよ、依拠した資料の多くは政府の解禁された公式文書であり、彼が研究員を務めたフーバー研究所の資料庫に眠る貴重な資料、私信などである。サットン自身が巻末の注釈でユダヤ陰謀論の有害性を指摘していることに注意されたい。〔ユダヤ陰謀論の立場に立つ著作ではユースタス・マリンズの大著『世界権力構造の秘密』(日本文芸社・絶版)がある。この本は反ユダヤのバイヤスが強い部分もあるが、マリンズ自身が合衆国議会図書館の職員だったこともあり、多くの文献を詳細に調べているので資料性が高い。AICについてはサットン以外ではマリンズのものしかまとまった記述が存在しない。マリンズ本の129ページ以下の記述はサットン本に依拠している〕 ウォール街は、これから十数年後の1930年代には、ヒットラーのナチス・ドイツを支援する。サットンはこれに関する著作『ウォール街とヒトラーの勃興』も書いている。彼らは今度は、ドイツの石油化学企業であるIGファルベン(いまのヘキスト社など)に多額の資金をつぎ込んでいたのである。その後、今度はソ連がアメリカの冷戦の敵国の座に躍り出るが、冷戦期においてもウォール街とアメリカ財界はソ連とのビジネスを継続していた。この結果、ソ連に対してアメリカの科学技術が流出している。このテーマを扱ったサットンの著作は、『カネで買える最強の敵』である。 結論: すべては「金銭欲」というビジネスの動機で説明が付く。左翼・右翼という分類自体がばかばかしい話なのだ。ウォール街はそれぞれの運動に巨額の資金をつぎ込むことで、その両方をコントロールできるからである。 IPR(太平洋問題調査会)とソ連の関係を論じる中西輝政氏のような研究者はいい線を突いているとは思う。さらに掘り下げて、このあたりの基本的な事実とウォール街とソヴィエトの密接な関係の歴史をふまえて発言していただけばいいのだが。コミンテルンの陰謀よりも恐ろしいのがウォール街の政治資金であるわけだから・・・。 ※ 死の商人についてはこちら。
アルルさん、メイルありがとうございます。
私は植田さんのところで、一度アルルさんへコメントしました、Crude Oilです。 わけあって、今はAmeripponのスクリーン・ネイムを使用しています。 > ヴァンダーリップの著作にも目を通されてい From farm boy to financierだったと記憶しています。 > サットン教授について、ブレジンスキーが業績を認めていると 1998年だったと記憶していますが、ピープル・ファインダーを通してサットン 氏にお会いし、その時に彼が述べていました。 ご本人の了解を取ったうえ、インタビューをICレコーダーで録音し、その時の 音声をもとに私も論文を読んだものの、タイトルを忘れてしまいました。 さらに彼は、「ハーヴァード教授で高名なソ連専門家、リッチー(多分ファー スト・ネイムはリチャード)も私の見解を支持している」と述べていました。 Amerippon
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