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2007年 04月 03日
John S. Reed, former Citicorp chairman アルルの男・ヒロシです。 懲りずに、シーグレイブの「ゴールド・ウォリアーズ」の話です。 前回まではこの本の非常にネガティブな部分について書いてきました。しかし、それでもこの本を最後まで読んだのは、やはりどこかに引っかかっている部分があったからです。今日は評価している部分について纏めて書きます。 最後の最後で、重要な部分がたくさん出てきました。第14章、第15章、エピローグです。この数章は、典拠になった情報が一般に公開されている、新聞、雑誌、議会議事録のたぐいが多いです。裁判の記録があるということはさすがに脚色はないだろうと判断します。 日本軍が戦時中に隠したとシーグレイブが主張する黄金は大きく分けて3種類。 1.昭和ファンド、M資金などの戦後のアメリカによる政界工作資金とされるもの 2.マルコス大統領が1970年代から1980年代に発掘し、スイスに預けたとされるもの 3.CIAの筋が発掘した「サンタ・ロマーナ」名義で世界の大銀行に預けられ(つまり運用され)ている秘密口座にある金塊群 以上で、本当に本当に裁判記録や、証拠書類の口座証明書などが真性だとすれば、どうやら3の目の欧米銀行に預けられた資金が厖大なうです。これが、アメリカによる世界秩序の源になっているとするのがシーグレイブの立場です。 日本人である私が、なぜこの本を熱心に、いろいろ文句をつけながらも全部読んだのには理由があるのです。 それは、「日本の戦後をもう一度問い直してみる」「世界規模での出来事と関連させて、日本の復興について考えてみる」ということなのです。 「なんだ、日本の戦後史なら色々このブログで書いてきたじゃないか」と思われる人が多いと思います。しかし、まだ裏の裏があったということに最近気が付いたというか、気が付かされました。 それが、スターリング・シーグレイブの「ヤマト王朝」と「黄金に魅せられた戦士達」という本をあくまで最初から疑いながら読み続け、それでも残った実感、感想です。 「ヤマト王朝」が最近邦訳されまして、こちらを書評しようと軽い気持ちで挑んでいたら、「これは非常に奥が深いぞ」とのめり込んでしまったのです。 シーグレイブというのは、ビルマ生まれの宣教師の息子でジャーナリストというか、小説家というか、その中間のような物書きです。彼は現在、フランスに住んでいるそうです。 シーグレイブは、フィリピンの大統領を取り上げた「マルコス王朝」や、西太后を描いた「ドラゴン・レディ」など、中国や東南アジアについての著作が多い。華僑についての本も書いています。 しかし、彼は日本についての歴史書も書いています。この内容は、かなり物議を醸すようなものです。それは徹頭徹尾、皇室を批判的に描いており、専制君主・国家元首として描きます。日本の論壇は、「あれは天皇機関説だったんだ」という見解がほぼどの論者にも一貫していますので、このシーグレイブの見解は伝統的理解に真っ向から挑戦するものです。 しかし、昨今の海外におけるいわゆる「従軍慰安婦問題」についての報道を読んでみても、これがニューヨーク・タイムズの一人の日系人記者によって火を付けられたキャンペーンでもあるにもかかわらず、それは抜きで日本批判のオンパレードです。おそらく、安倍首相をおろしたいという政治的意図があるのだろうと思います。 シーグレイブの「ヤマト王朝」では、明治維新の裏の秘密までは扱わないものの、天皇と皇族が三井、三菱のような財閥に操られており、このインナー・サークルが、海外の富豪、財閥ネットワークと上で結びついていたという視点に立ちます。実は、これは欧米の左翼系のジャーナリスト達の間でかなりの間、共通認識になっていることを最近気が付きました。世界レベルでの日本の皇室に対する理解はそのようなものです。 以前、このサイトで、日本の戦後復興を取り扱った「軍隊なき占領」という本を紹介しましたが、シーグレイブたちの理解も彼等の一世代前のジャーナリストたちの研究の上に立っています。ですから、大筋においては間違いではありません。 しかし、シーグレイブが新しい方の本「黄金に見せられた戦士達」の中で、伝聞情報を全面的に信用して、秩父宮などの皇族の戦時中の行動をフィクションを交えて描いているのはいただけません。この部分は私はいつまでも批判します。 彼は「マルコス王朝」において、戦時中に日本軍が接収、略奪した金銀財宝をフィリピンの洞穴に隠匿したのは、戦後B級戦犯として処刑された、「マレーの虎」こと山下奉文将軍と児玉誉士夫であると記述していました。ところが、新著の方では、同じ人物の証言が元になっているにも拘わらず、これを実行したのが皇族の竹田宮と秩父宮であり、山下と児玉はその配下に過ぎなかったと新しく加わっている。 そのように、なぜ突然ストーリーが変わったのか分からない箇所がある。これがこの著書の信用を著しく下げています。黄金発掘の回想シーンは映画「インディ・ジョーンズ」を焼き直したような描写が多く、これも脚色の一種だと思う。 しかし、どうも最後まで読み進めてみて、 Ⅰ 日本軍の残した財宝をマルコス大統領が発掘させたことは事実らしい(いわゆる山下黄金) Ⅱ マルコス失脚直後、CIAの人物がフィリピンに黄金探索に出かけているのは事実で、英字新聞にも幾つか記事がある Ⅲ 戦後まもなく黄金隠匿に関与したフィリピン人の遺族(サンタ・ロマーナの遺族)が、シティ・バンクのジョン・リード会長を相手取って、訴訟を行っていることは事実である 以上のことは少なくとも事実であると分かりました。 このドラマの中で登場する人物は、実際にCIAの裏工作員として、レーガン政権時代の「イラン・コントラ事件」に関係していた「世界反共連合」の人々が多い。 シーグレイブは黄金発掘に反共団体のジョン・バーチ協会が関係していたと書きます。その裏付けは難しいが、私は半信半疑です。 昭和天皇の評伝を書いた、ポール・マニングという記者は、マッカーサーとも実際に接触を持った事のある人物でその取材の成果から、「皇族は戦争終結直前にスイスに多額の資金を逃がしていた」とこの評伝本の中で書いています。戦後の復興が実現できたのは、マニングのいう、「天皇家の財産」が、GHQによって日本に逆送金解除になったからだというふうに解説されています。 スイスにはBIS(国際決済銀行)がありますので、資金の出し入れもここを経由していると思います。 この内容は確かに日本ではまだタブーでしょう。同じような例として、ナチスに財産を奪われたり、被害者達がスイスの銀行を相手取り訴訟を起こしているというものがあります。 これは、フィンケルシュタインの「ホロコースト産業」に取り上げられていましたよね。この財産の認定を行ったのが、FRB元議長のポール・ヴォルカーで、肝心の財産は本当の持ち主には渡らず、ユダヤ・ロビーの財団に移ってしまったという話が書かれていました この「ナチス財産返還訴訟」を支援したのは、国務省のスチュアート・アイゼンシュタットという高官でした。彼はイスラエル・ロビーでもあります。 そう考えると、シーグレイブの著書をネタに、日本の隠匿財産を返還せよという動きが始まっていると考えることも出来る。 しかし、以下の産経新聞の記事が伝えるように、戦後補償は27カ国に対して行っている。 (引用開始) 米国のアリソン公使は同年六月、外務省の井口貞夫事務次官に、米英合同による草案を手渡した。(1)日本は、原則として戦争で与えた損害と苦悩に対して賠償を払うべきであるが、自立経済を維持しようとすれば、賠償を負担する十分な経済力はないことが承認される(2)しかし、日本軍によって占領され、日本によって損害を被った連合国が希望するなら、生産物賠償、沈船引き揚げ、役務賠償を行うよう直ちに交渉を始める-と明記されていた。 結局、講和条約はあくまで日本への賠償を求める国の意向をいれて、「日本国軍隊によって占領され、日本国によって損害を与えられた連合国」が日本と二国間協定を結ぶことで賠償を受ける道を開いた。 対象国は最終的に二十七カ国に及び、これらの国に日本が行った戦後賠償の総額は、賠償、準賠償(経済協力)、戦後処理的性格を持つ請求権処理を合わせると一兆五千七百十一億円に達する。しかし、グアムなどを日本軍に占領された米国や、香港とシンガポールの占領を受けた英国、それにオーストラリアは賠償請求権を放棄または行使しなかった。 【講和50年と日米】第2部 同時テロと安保新時代(6)対日賠償論議 2001年12月16日 産経新聞 東京朝刊 1面 (引用終わり) しかし、一方でサンフランシスコ講和条約で、「財産を持っていないから、日本の賠償責任は免除したんだから、持っていたら賠償の義務が生じるよ」という条項(第14項)があります。また、それとにたような条項として、「他の国に賠償したら、財産があったと見なすから、他の国にも賠償しなければならなくなるかもしれないよ」(第26項)という条項があります。 2000年に機密解除された資料によると、オランダ政府に対してはダレス国務長官の認めた「例外」として、どうも1000万ドル分の賠償金を支払ったというのです。日本政府が恐れているのは、アジアに対する請求権が認められてしまうことで負うことになる訴訟の負担や、金銭的リスクの大きさであるようです。 しかし、仮にシーグレイブの書くように、アメリカが戦後発掘した黄金が存在するとすれば、この金銭的負担の心配は不要でしょう。 この山下黄金というか、現在世界の176の銀行口座に分散されているとされる銀行に預けられた金資産が実際に存在するのではないかという噂になって、それを狙った争奪戦が始まっているのかもしれません。(ロンドンの「エコノミスト」誌は、2003年にアロヨ大統領が、フィリピン国内の債務問題を解決するために黄金探査をするべきだと発言したことを記事にしています) しかし、実際のところ、この巨額とされる資産は日本というよりは、シティ・グループなどの欧米系の銀行にあるし、名義も日本人ではないのです。日本には、この資産の一部が「昭和基金」として三和銀行に預けられているという話がありますが真相は不明です。 また、シーグレイブは、日本の戦史資料のアメリカにとって不利になる部分は、かなりの部分が、アメリカ・カリフォルニア州にあるフーヴァー研究所に移されて保管されていると書かれています。フーヴァー研究所の研究員だった、アントニー・サットンという暴き系の言論人は、フーヴァー研究所について、「第1次世界大戦で行われたアメリカの戦争犯罪、公式歴史に矛盾する資料を全部集めていた。そのために食糧庁長官だった後の大統領のフーヴァーが作らせた」と書いていました。同じような話が、第2次世界大戦に起きたと考えればいい。(フーヴァーについてはマリンズも詳しく書いていると記憶する) いまさら日本の資産でないのだから、存在するとすれば、仮に戦争被害者に返還されてもかまわないし、余り日本は困りません。(困るのはアメリカでしょう) あくまでまだそのような資産が残っているとすれば、ですが。 シーグレイブによると、同じような隠匿財産のナチスバージョンとして、「ブラック・イーグル・ファンド」というものがあり、これがマーシャル・プランの原資になったそうです。 日本の慰安婦問題の対応を批判するアメリカは、戦後日本軍のいなくなった地域に進出してきて、日本人の作った慰安所を居抜きで転用した、と秦郁彦教授が書いています。 シーグレイブを信じるならば、戦後のアメリカは「財産」まで居抜きで横取りした事になります。 私はシーグレイブの本の一部の安っぽいアクション映画のような記述は信用しませんが、上のような大きな真実があるとするギモンには真摯に耳を傾け、自分なりに検証していきたいと思っています。 シーグレイブのいう日本に対する批判のすべてがすべて受け入れるべきものとは思えない。典拠のはっきりしない批判もたくさんある。それは、日本人がアメリカ批判する場合に出てくる事実誤認と同レベルのものである。 シーグレイブは、日本がアメリカの属国であったと言うことの意味を気づかせてくれる。「日本は戦後、(略奪したとはいえ)自分の金庫の管理権をアメリカから奪われた」ということだったのだ。戦後の復興は、アメリカの許可を受けて、自分の隠し財産を使ったということである。 シーグレイブは、フィリピンからマルコスやアメリカ人の黄金探索者が発掘したというゴールドの件で、日本を批判すると同時に、米国政府や金融財界も批判している。 日本政府に提案したいのは、「これらの隠匿黄金」について、「戦時中のこと」として、残っている文書や資料の範囲で、公式の形で、認めてしまって、欧米の銀行に残っている残余の額の8割をアジアの為の基金として役立てると言明すればいいのだ。今現在、日本に管理権のあるお金でもないのだから、日本の財政には影響がない。残りの2割を財政再建に使うことにすればいい。 そうすれば、日本は他国が文句の言えない形で、戦後補償についての「道徳上の高い地位」に立つことが出来る。戦争で、接収略奪は往々にしてあることである。それを認めても、日本の威信が傷つくことはない。 それよりも、シティなどの欧米銀行が管理することの方が問題だと思う。アメリカはこっそりと金をため込んでいた。それを、大銀行が金の売り投機を行って、金価格を意図的につり下げていたのだった。(これは、ロスチャイルド家の金庫番である「フェルディナント・リップス」という人物が書いているし、エコノミスト誌の記事にもなっている) 金価格が再び上昇してきた。それもテロ後に。 何か流れが変わっているのは確かだ。それが、下からの変化なのか、今まで通りの支配者層の戦略の転換にすぎないのかは分からない。 いずれにしても、日本が、シティにある隠匿財産の存在を暴露することで、それを戦後補償に使う(というか、実際には、返還なのだが、帰属が不明な部分をアジア共通基金のための利用する)というのは、中国も批判しようがない。マイク・ホンダやダナ・ローラバッカーのような対日批判を行う政治家は、日本の戦後補償の問題は、ひょっとしたらアメリカの問題でもある事を考えているのだろうか。 以上の手はずで、くれぐれもその資産がまだ存在するとの前提であるが、日本がそれを原資に補償を行えば、日本はこれでアメリカに「勝つ」ことができる。しかも、今時点での自分たちの懐は全然痛まない。 事実を知っている日本政府があとは判断することです。宮澤喜一元首相が存命の内に解決しておくべき問題ではないかと私個人は考えます。しかし、判断は政府が行うことです。そのようなアメリカとの裏の関係があったかどうかも含めて、真実の話がどのようなものだったか、シーグレイブの推理が何割の確率で当たっていたかどうかは、そのときにならないと分かりません。 フォーリー元駐日大使は、「(講話)条約に対する米国の責務に不信感を生じないようにしよう」と、日本に対する戦後補償問題を論じ、のシュルツ元国務長官の議会あて書簡に共感を示して結びとしている、と過去産経が伝えていました。日本の戦後に対する裏支援が事実であれば、日米は、「価値観」だけではなく「秘密」も共有していることになりますね。 ![]() Christopher J. LaFleur (宮沢元首相の娘のご主人。元駐日公使、監視役?) ==== これに関連し、「学問道場」サイトで次のような続き物を書こうと思いました。 (1)シーグレイブの「ヤマト王朝」を読む~日本人は海外からどのような目で見られているのか~(オリエンタリズム) (2)鬼塚英昭『天皇のロザリオ』、浜田政彦『神々の軍隊』、高橋紘『天皇家の密使たち』を読む(天皇家とキリスト教) (3)「世界反共同盟」と「イラン・コントラ事件」が浮き彫りにした戦後アメリカ主導の世界秩序の裏面史(「インサイド・ザ・リーグ」書評) (4)「ホロコースト産業」から「黄金の戦士」へ(巧妙にアメリカは一部の権力者だけに戦争被害の補償を行った。いま再びアメリカは金を支配しようとしている) 以上の3~4回シリーズで原稿を用意します。(1と2は一回かもしれない)書いておかないと関心が次々に別の場所に移ってしまうので予告をしておきます。 アルルの男・ヒロシ拝 by japanhandlers2005 | 2007-04-03 19:38 | Trackback | Comments(3)
M資金については、かつて鍛冶壮一という人がデンパみたいな おぞましい話をしていました。M資金は民主党が掘り出した日本の隠匿物資のようです。それよりも皇室は廃藩置県で大名から土地を、三井や三菱から株式の寄付を受けていたらしいです。その資産を運用していたのは住友銀行らしいです。終戦後、昭和天皇の決定でガリロアエロア資金の担保に差し出されたとか。そんな話を思い出しました。 >しかし、シーグレイブが新しい方の本「黄金に見せられた戦士達」の中で、伝聞情報を全面的に信用して、秩父宮などの皇族の戦時中の行動をフィクションを交えて描いているのはいただけません。この部分は私はいつまでも批判します。 同意します. もし,これが事実ならヤマト・ダイナスティは50年以内に消滅するでしょう. ゴールデンブッダ事件という、純金の仏像を巡っての不思議な事件を月間誌で読んだ事を思い出しました。
中華文明エリアでは金もしくは阿片樹脂が通貨だった訳ですし、今も小金を掴んだ中国人たちは、何がしか必ず金製品を身に着けていますね。紙切れを信じていないのは同じかもしれません。 M資金に詐欺話は付き物ですが、その頃に一時情報を知る権限を持っていた人が今生きているとすれば、もう100歳前後でしょうから、秘密の殆どはあの世に行ってしまっていて残念ですね。
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